2011年10月31日
by yamamori
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黒炭技法による炭焼き

早川山守会は、間伐材を有効利用する方法の一つとして、毎年、9月から翌年4月にかけて、炭焼きを行っています。ここでは、山の石(粘板岩)と粘土を使って作った「伝統的炭焼き窯」(内容積2.5㎥)を用いています。最近の窯は、ほとんどが耐火れんがやキャスターを使って作られていますが、これに対し、粘土の窯は、温まりにくく冷めにくい特徴があり、じっくりとした炭焼きができ、良い炭が生産できるという利点があります。 我々が現在行っている炭焼きは、「黒炭」という技法で行うものです。これに対しいわゆる「白炭」という焼き方があって、こちらは途中までは「黒炭」と同じ方法で焼きますが、最後のいわゆる「窯止め」(空気を遮断して窯内で4日間ほどかけて徐々に炭化させる工程)の代わりに、逆に窯口を徐々にあけて空気を窯内に入れ、より高温で焼き上げたものを熱いまま取り出して、灰で冷やすという技法です。いわゆる「備長炭」で、固くて火持ちの良い炭になりますが、火付きはよくありません。 早川山守会の炭焼き窯は、1回の炭焼きで、約100kg~120kgの木炭が焼けます。同時に、「木酢液」が50リットルほど取れます。木酢液は、水で薄めて園芸や農業に使用します。50倍程度に薄めて、樹木等に塗布すれば防虫効果を示します。また、100倍以上に薄めて、作物等に散布すれば、作物が元気になります。木酢液には、樹木が作る貴重な有用成分がたくさん含まれていますので、微生物の繁殖に向いており、繁殖した微生物が植物細胞を活性化したり、病原菌の繁殖を抑えたりするといわれています。しかし、酸性が強いので、濃いままで使うと植物が枯れたりしますので注意も必要です。また、タール分が含まれていますので、3か月以上静置したものを濾過して使うことが必要です。もちろん蒸留すれば、タールは分離できますが同時に微量有用物質も除かれる可能性があるので、一長一短でしょう。 早川山守会では、自然木のみを焼いた煙を冷やして、良質の木酢液や竹酢液を製作しています。また、とうがらしとニンニクを加えて発酵させた「木酢パワー液」も商品として販売しています。 2リットル入りペットボトルが750円(市価)です。 早川山守会の炭焼き歴はさほど長くありませんので、炭焼き何十年という名人のような知識・経験は持ち合わせませんが、初期の頃、失敗を繰り返しながら学んだこともいろいろありますので、ご興味のある方のご参考として、黒炭焼きの工程について、以下に説明します。   工程1  まず、炭にする木を集めます。良い炭や木酢液を作るためには、伐採後あまり日にちが経たないうちに、木を窯に入る大きさに切り、太さも小口直径で8cm位にそろえることが望ましいです。使う木はいろいろですが、楢(なら)や樫(かし)などの硬い木が最高です。杉、ひのきなどの針葉樹は、柔らかい炭になり、火力も弱く、一般の木炭製造には適しませんが、農業用粉炭などとしては使用できます。 工程2  準備した木を窯に詰めます。まず、「しきぎ」と呼ばれる木を窯の底に一面に敷きます。我々は、竹を2段にして敷き詰めています。そして、しきぎの上に、炭にする木を垂直に立ててぎっしりと詰めていきます。最後に、窯の天井との隙間(20cm位空ける)に「あげき」と呼ばれる端切れの木をこれも出来るだけぎっしりと詰めます。理由は後で説明しますが、窯の中にできるだけ隙間が空かないように木をきちんと詰めることが極めて重要です。また、窯の入り口にある木は燃えて灰になりますので、炭にしたい良い木は窯の奥またはサイドに入れます。 工程3  窯の口を、レンガ等でふさぎます。但し、窯口の下部に小さな空気取り入れ口を開けておきます。また、火入れ後しばらくの間は、窯口の上部に燃料となる木を投入する窓を開けておきます。窯の入口には、40cm×40cm×60cm(高さ)のサイズの燃焼室(写真参照)がつけられており、ここに燃料となる木を入れて、火をつけます。5~6時間の間、どんどん燃料(木)を入れて火力をあげるとともに、火を窯の中に入れるよう、窯口から空気を送り込みます。 燃焼室の火は、まず「あげき」に移り、あげきから立てておいた木に移り、上部から下部へ徐々に焼けていきます。この時、隙間があると全体に均一に火がまわらないので、工程2の窯詰めが悪いと生焼けの炭が混ざったりします。また、底に近い部分は焼けるのが遅く、良い炭にならないため、「しきぎ」は製品にはしません。 工程4  火を入れてしばらくすると、煙突から勢いよく白い煙が出てきます。これは、木に含まれた水分が蒸気となって出てきているものです。生木の重量のうち半分ぐらいは水で、火入れ後丸一日ぐらいかけて、白い煙が出続けます。この間は、煙の温度も上がりません。途中で鎮火しないよう、燃料を入れ続けます。燃料投入口は、窯内に火が確実に入ったと思われるときに塞ぎますので、燃料は、窯口下部の空気取り入れ口から入れます。 工程5  白い煙の匂いが少しイガラクなってきたら、煙突出口の煙の温度の計測を始めます。ある時を境に、煙の温度が徐々に上昇し始めます。この時点で、木の中の水分がほぼなくなり、窯内の温度が上昇するため、セルロースが熱分解し、そして、更に温度が上がるとリグニンが熱分解します。これらの熱分解は発熱反応であるため、これまで窯内の熱源として必要であった少量の酸素も必要なくなるので、空気取り入れ口はほとんど閉めてしまいます。煙突口の大きさも絞ります。燃料(木)の投入ももう必要ありません。 工程6  温度上昇後20時間程度、煙突出口の温度計測を続けます。また、煙の状況(色とにおい)を注意深く観察します。煙突出口付近の煙の色が透明になり、煙突出口の煙の温度が180度程度(マッチ棒を入れたら20秒以内に発火する)になったら、「窯止め」の準備をします。まず、煙突口を全開にし、窯口の空気取り入れ口を徐々に開いて空気を入れます。2時間程度、この状態を維持し、窯内の温度を最高にあげて、窯内の不純ガスなどを燃やす「精錬」と呼ばれる工程を経たのち、窯口及び煙突口を完全に密封し、空気が一切外から入らないようにします。少しでも空気のもれがあると、何日かして窯を開けた時に全部灰になっていますので、慎重に行います。 工程7  4日ぐらいたって、窯を開けます。まだ、火種が残っている可能性がありますので、窯口を開けるときは、徐々に、そして注意深くする必要があります。黒炭焼きの場合、うまく炭焼きをしても、生焼きの部分、焼きすぎの部分が多少は混ざると思います。窯の仕組みから考えて、全体が均一に焼けることはありえないからです。それに、温度上昇するまでの間は、窯内の木を少しずつ燃やす熱で温度を維持する必要があるので、どうしても入り口付近の木は灰になります。したがって、窯出しの時は、炭の選別をしながら行います。通常、窯内に入れた木の2分の1~3分の2ぐらいの容積の木炭ができます。 (了)